普段は高血圧とPSA高値に対し、通院加療中の70歳台の男性。数日前から右手の痺れと言葉がスムースに話せない(構音障害)と定期受診日の診察時に訴えがありました。
診察室に行ってくる際には歩行障害はなく、話し方もそれほど気になる変化はなかった印象でしたが、脳のMRIを撮影するため、近隣施設にすぐさま連絡し紹介受診となりました。
MRI撮影後、すぐに放射線科の担当Drから連絡があり、左内頚動脈閉塞による脳梗塞を発症しているので、このまま脳神経外科に緊急入院をさせると連絡がありました。
【脳MRI画像T1強調像:左大脳半球領域に急性期脳梗塞巣】
【MRA画像:左内頚動脈閉塞】
当院に通院されたのはかれこれ4年前からでしたが、年1回の心電図上では洞調律で、完全右脚ブロックと上室性期外収縮があるのみでしたから心原性脳梗塞は否定的です。採血データー上ではLDL140台と軽度の高コレステロール血症のため、内服加療はしておりませんでした。また、Cr1.14、e-GFR48.7↓と慢性腎臓病があります。それとPSA高値6.75ng/mlとグレイゾーンでMRI施行し、PIRADS分類でカテゴリ-4であったため、前立腺生検施行するも悪性像なし。血圧コントロールもARB(アンジオテンシン受容体拮抗剤)1剤服用のみで自宅での血圧120-130台/70-80台で推移しておりました。
そんな状況下での動脈硬化性の左内頚動脈閉塞による左大脳半球領域に発症した急性期脳梗塞。すぐに入院され、血栓溶解の点滴加療を施行し、リハビリも行って約2週間の入院加療を終え、ほぼ後遺症なく元気にまた当院に受診されました。
大事に至らず、QOLの低下も来さずもとの生活に戻られてほんと良かったです。
普段いろいろな患者さんを診察させて頂いておりますが、過剰診療はいけないですが、重大な疾病を見逃すのはもっとまずいので、いつも神経をピリピリさせながら今後も慎重なる診療を心がけてまいりたいと思います。