意識消失して救急搬送されるも原因不明。その後、当院受診して右卵巣出血が発覚した1例
先日20代の女性が排尿時の膀胱の違和感を主訴に当院受診されました。主訴のみを聞くと、年齢、性別からして急性膀胱炎で決まりのはずですが・・・。色々と当院に受診するまでのエピソード聞いていると、???何それ?ちょっと話が違うくないか?と根掘り葉掘り聞い入ってしまいました。そもそもの発症は、当院受診前の2日前に激しい腹痛と立ち眩みが出現。頑張って出勤するも辛くなり早退。帰宅途中で昼食を買おうとスーパーに立ち寄ったところで意識を失い倒れこみ救急搬送されたとの事。搬送先の病院でCT撮影をするも異常なし。おそらく、激しい腹痛による迷走神経反射(VVR)による意識消失であったであろうとの事で帰宅されたと。その後も、腹部の違和感と前手術の排尿時の違和感が続くため当院受診された、という経緯でした。ん~、ここ2日間のエピソードからすると、膀胱炎でVVRなんてまず起こさないし、しかもよく聞くとCT撮影された部位は頭部から胸部までであったとの事。再度当院で腹部の理学的所見を取りました。腹部全体は弾性軟で反跳痛なし。筋性防御もなかったものの、上腹部から下腹部全体に軽度の圧痛を認めました。また、BMI20.7とやせ型の割にはやや腹部が膨満している感じがしました。その後、尿路エコーを行ったところ、両側腎は異常なし。膀胱内も異常なし。しかし、矢状断で膀胱と子宮は異常無かったものの、腹腔内に腹水か何らかの液体貯留と考えられる所見を認めたため、すぐさま近隣の病院へCT撮影の依頼をしました。すると???どうやら、エコーで認められた液体貯留は右卵巣出血によるものであることが判明しました。またすぐさま、婦人科で対応できる病院を探し、入院ベッドがないと言われましたが、その判断はそちらで決めてくれと半ば強引に搬送することとなりました。結局その後経過は、搬送先の婦人科での診断も同様に右卵巣出血であった様で、出血の程度を見る指標としてHbをそくていしたところ、9台と低かったため、一泊入院となり翌日再検したところHbの下げ止まりを認めたため、保存的加療での経過観察との方針となり無事退院されたとの事。その後2週間後に再度Hbと画像checkでHbの上昇と血腫の消失を確認できたとの報告が来ました。無事、大事に至らずに解決してほっとしました。それにしても、初めの救急搬送先での初療の対応がまずいと思いました。確かにCT王国日本と世界中でCTを取りまくる日本を揶揄されてはおりますが、だからと言って中途半端に撮影して見落としがあってはいけませんよね?しかも、画像上異常無いからと言って、おそらく腹痛からくる迷走神経反射でしょうといっておいて、なぜ腹部を撮影範囲に入れなかったのか?疑問です。迷走神経反射とは激しい痛みや強いストレスを感じた時に起こる現象で、一時的にふっと意識を無くしてしまい倒れこんだりうつぶせになったりします。よくドラマで訃報を聞いたり、ショッキングな内容を聞いてご婦人が倒れこむシーンや、採血時に前のめりにうつぶせになってしまうケースがそれにあたります。今回も卵巣出血による激しい腹痛から迷走神反射(VVR:Vasovagal reaction)が起こったと考えられます。また、卵巣出血には様々な原因がある様ですが、今回の方はもともと月経困難症に対する内服薬を服用しており、原因の一旦であった可能性はありますが、はっきりとしたことは分からずでした。いやー、救急搬送先の病院で診断がつかず、しかも、かかりつけの婦人科に行かず、膀胱炎症状で当院に受診されて卵巣出血が発覚するという展開はまず予想だにしませんよね?まさに、”臨床は教科書より奇なり”です!たかが一クリニックですが、貴重な経験をさせていただき、また一歩成長できました!患者さんに感謝です!