小児亀頭包皮炎、包茎:すがわら泌尿器科・内科 小児亀頭包皮炎、包茎:すがわら泌尿器科・内科

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小児亀頭包皮炎

当院は泌尿器科・内科を標榜しておりますが、小児のお子さんたちも多く訪れます。最も多いのが、包茎と亀頭包皮炎の相談です。2番目に多いのが夜尿症になります。小児の包茎の多くは生理的で思春期までに包皮翻転可能となるため、無症状の場合は治療は不要とされております。また、何とか包皮を翻転して、亀頭を露出させようとすると、嵌頓包茎や瘢痕化のリスクを伴うため、ご両親が施行されることはお勧めしません。また、思春期前の小児の包茎における絶対的手術適応は、徒手整復できない嵌頓包茎(準緊急)や包皮輪が瘢痕化した病的包茎とされています。包皮が腫脹して、赤くなっている、痛がっているなどの症状で来院される亀頭包皮炎が多く見受けられますが、基本はステロイドもしくは抗生剤(ゲンタシン)の軟膏塗布で、数日で改善します。しかし、真性包茎であるがために、しっかりと包皮を翻転できない場合が多く、皮脂や恥垢が細菌の温床となり、炎症を繰り返す場合もあります。その場合は、包皮輪が狭くて無理に翻転したら裂傷してしまう場合は行ってはいけませんが、比較的包皮輪にゆとりがあり、癒着部分を剥離さえできてしまえば亀頭をしっかり露出できる症例に関しては、ベッドサイドにて包皮と亀頭の癒着剥離を行います。ただし、かなり痛みを伴ってしまいますので、炎症を繰り返すことで親御さん、お子さんともに非常に悩んでしまっている場合に限りやむなく当院では行っております。包皮が翻転できるようになることで、ご自宅で普通にシャワー浴時に洗浄できるため、恥垢や皮脂が溜まらなくなり、亀頭包皮炎の繰り返しはなくなります。痛みの代償として、炎症の再発から解放されます。よく、手術はしなくてもいいんでしょうか?と同伴された親御さん達に質問されますが、やはり局所麻酔では無理なため、全身麻酔となるリスクと最低1泊入院は必要となるためにそこまでの侵襲を加えることは常識的に過剰医療となってしまうため、基本小児の包茎手術は積極的には行わないことをご説明させていただいております。生理的包茎は陰茎の発育や勃起、炎症の原因とはならない恥垢によって、年齢とともに改善し、17歳までに95%以上の男児で包茎を完全に翻転することができるようになるとの報告がなされています。(※臨床泌尿器科2023 VOL77 NO1包茎;小児に対するファーストタッチより抜粋)
以下、実際の当院の症例をお示しします。
5歳の男児で、半年前に初診で包皮の腫脹と発赤を主訴に来院されました。一般的な包皮炎で包皮の翻転は可能も途中亀頭と包皮の生理的癒着があり、恥垢の付着も認められました。入浴時にシャワーの流水での愛護的な洗浄とボディーソープを使用して皮脂も除去するよう指導し、そのあとにステロイドと抗生剤のmixされた軟膏を塗布してもらうこととして、帰宅。以降、炎症は起こさなかったようですが、先日半年ぶりに再発したと来院されました。親御さんからも今後の再発を起こさない様にしたいと希望があったため、用手的に亀頭と包皮の癒着剥離術を施行し、中にたまっていた恥垢を除去しました。癒着を剥離しただけでは、炎症が沈静化する過程で再癒着を引き起こしてしまうため、最低2週間は包皮と亀頭のコーティング目的にシャワー浴後に軟膏を塗布するよう指導しました。


(再診時の包皮腫脹像)

(包皮翻転時)
亀頭と包皮の癒着の境界部分に多くの恥垢付着を認めました。

癒着を剥離すると中に埋もれていた恥垢が大量に認められました。 
    
  
恥垢を除去し、完全に亀頭を露出したところ。このあと、軟膏塗布してコーティングし、包皮をもとに戻しました。


こちらは10歳の男児。包皮腫脹と膿の排泄を主訴に来院されました。

この子は膿が排泄されるほど炎症が強かったため、セフェム系の抗生剤2日間服薬とステロイドと抗生剤のmix軟膏塗布し、経過をみました。

 
再診時、炎症は沈静化したものの、包皮輪に瘢痕狭窄を認めておりました。幸い排尿に影響はなく、経過観察となりましたが、今後排尿障害等機能的な問題が生じた場合は手術適応になるため、その旨をご両親にご説明しました。

小児の亀頭包皮炎は幼少期にはよく見られる疾患ですが、初めて経験する親御さん達はとても心配されてお子さんを連れてこられます。基本的な処置と軟膏等で改善する疾患であり、ある意味成長過程で起こってしまうアクシデントではありますが、うまく対症療法で乗り切れる疾患です。
いつでもお気軽にご相談いただけましたら幸いです。