発熱、咽頭痛、肉眼的血尿を主訴に来院した患者さん。溶連菌感染後糸球体腎炎として、ペニシリン系抗生剤投与後数日で症状が完解。 発熱、咽頭痛、肉眼的血尿を主訴に来院した患者さん。溶連菌感染後糸球体腎炎として、ペニシリン系抗生剤投与後数日で症状が完解。

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溶連菌感染後糸球体腎炎

 当院は内科も標榜しているため、風邪を引かれた患者さんも診察します。ただ、風邪の中でも典型的では無く、時に咽頭痛、発熱などの一般的上気道症状だけでは無く、肉眼的血尿も付随して来院される患者さんもいらっしゃいます。おそらく、肉眼的血尿の方がインパクトが強くて泌尿器科を標榜している当院に受診されるのだと思います。
 先日40代の女性が2-3日前から扁桃腺が腫れている気がする、肉眼的血尿も出現し、37.7℃の発熱もあるとの事で来院されました。近医かかりつけ内科では尿潜血反応はいつも陽性と指摘されているとのことでした。受診日前夜から徐々に肉眼的血尿が濃くなってきているとの事。
まず、理学的所見として咽頭を見てみたところ、左側の咽頭の発赤と腫脹あり。諸説に咽頭の白苔が付着していれば、ウイルス性ではなく、溶連菌感染と鑑別できるとありましたが、今回は白苔を見出すことはできませんでした。尿路エコー上左腎W.N.L、右腎W.N.L、膀胱内SOL(-)で、尿路に器質的な要因は認められず。尿細胞診classⅡ。尿沈渣上赤血球多数/hpf、WBC0-1/hpfと赤血球が多数認められており、変形赤血球も存在していたため、尿路由来ではなく糸球体由来と判断しました。


【溶連菌感染による咽頭所見のシェーマ:今回の症例では咽頭発赤のみで、扁桃肥大や白苔の付着は認められず。】

 そして、尿定性反応では尿蛋白3+と強陽性でしたので、この時点で溶連菌感染後糸球体腎炎を発症していると診断しました。通常の風邪症候群はウイルス感染がほとんどですから第一選択薬に抗生剤を処方する事はありませんが、今回は検査キッドで溶連菌を調べたわけではありませんが、臨床像として溶連菌感染を強く疑わせる所見であったため、診断的治療としてペニシリン系抗生剤であるアモキシシリンを処方しました。蛋白尿がかなり出ていたので、腎機能と尿中蛋白の定量検査も行ったところ、Cr1.19mg/dL(基準値0.47-0.79)e-GFR41.1ml/min(基準値60以上)と腎機能の低下を示しており、尿中蛋白定量検査も2.49g/gCr(基準値0.15未満)とネフローゼ症候群の基準までは達していないものの、かなりの量の蛋白尿が出ていました。


【糸球体由来の変形赤血球:糸球体というフィルターを通過する際に、障害を受けて変形した赤血球】

 1週間後に再診された際には、咽頭痛は3日で完解し、肉眼的血尿も徐々に薄くなって、熱も下がったとの事でした。他に炎症反応の指標である血液検査上の白血球9800↑(基準値3300-9000)、CRP7.73↑(基準値0.3未満)と高値を示しており、検査結果、診断的治療の効果から確定診断とはならないまでも、ほぼ臨床経過から溶連菌感染後糸球体腎炎として矛盾しないと判断しました。
溶連菌感染症とは、起炎菌はA群β溶血性連鎖球菌感染後に発症する咽頭炎や発熱、膿痂疹という皮疹が特徴の疾患です。そこに腎炎惹起性菌株による影響で糸球体腎炎が発症する様です。
 通常は5-15歳の小児における糸球体腎炎の最も一般的な原因であり、2歳未満の乳幼児や40歳以上の成人では少ないとされています。今回の方は再診時に尿蛋白定性反応が陰性化しており、尿沈渣上赤血球5-9/hpfと減少していたことから、一部でネフローゼ症候群に移行するケースもあるとの事ですが、現時点では軽快しているので、腎臓内科への依頼はせず自院での3か月後followとして経過観察としました。
 また、過去にもう一方22歳の女性で同様の症状で来院され、尿沈渣上赤血球多数/hpf(変形赤血球あり)、WBC1-4/hpf、血中WBC15200↑、CRP1.84↑、尿中蛋白定量7.28g/gCrとネフローゼ症候群(基準値3.5g/gCr以上)の基準に達した溶連菌感染後糸球体腎炎の方がいらっしゃり、同様にアモキシシリン投薬で症状完解には至りましたが、さすがに蛋白尿がネフローゼレベルであったため、近隣の腎臓内科に紹介とし、その後蛋白尿は消退し経過観察となった例もあります。
 本来小児に多い疾患の様ですが、血尿が主訴となった場合に泌尿器科受診をされる成人のケースでは、このような溶連菌感染後に発症する2次的な肉眼的血尿を主訴に来院される場合もあることを臨床の現場で学ばせて頂きました。あと、溶連菌感染症の陰性所見として、咳嗽がないのが特徴の様です。確かに今回経験した2例とも主訴に咳嗽はありませんでしたね。
 当院を頼って来て頂ける患者さんには多くの事を学ばせて頂き、また私の医師としての成長の糧にもなって頂き、とてもありがたく思っております。学ばせて頂いた事は、今後来院される患者さんにしっかりと還元していきますね。


【当院では未だに時代に逆行して、尿沈渣は原始的に顕微鏡で見ています:やっぱり機械任せで数値だけではなんか実感がわかないんですよね。生の検体を自らの目で見る楽しさは、一応科学者の端くれとして取っときたいんです・・・。】