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膀胱異所性子宮内膜症

皆さん、子宮内膜症って聞いたことありますか?女性なら、誰しもが1度は耳にしたことがあるかと思います。通常は女性特有の病態で、子宮内に起こる疾患です。しかし、この子宮内膜症は、子宮以外の臓器にも発症することのある疾患なんです。今回は膀胱異所性子宮内膜症の1例を経験しましたので、ご報告いたします。
半年前から月経周期に連動して、頻尿症状が出現するとのことで、受診された30代女性。過活動膀胱としても矛盾はしませんが、月経周期に付随して頻尿となると、ちょっと違いますよね?
初診時尿沈渣上RBC5-9/hpf、WBC0-1/hpfと顕微鏡的血尿あるも、尿路感染なし。尿路エコー上左腎異常なし、右腎異常なし、膀胱内尿量少量も膀胱壁に一部肥厚像?あり。



尿細胞診classⅡ(変性細胞)でしたが、膀胱内を膀胱鏡にて観察してみると・・・。


膀胱異所性子宮内膜症に特徴的なブルーベリースポットと粘膜の隆起性病変が散在しており、通常の膀胱癌のような乳頭状腫瘍の像は呈しておりませんでした。


こちらが通常の膀胱癌の内視鏡像:乳頭状腫瘍の像を呈しております。

内視鏡所見から、膀胱異所性子宮内膜症を疑い、膀胱と子宮との関連性、腫瘍の膀胱壁深達度を精査するため、MRIをオーダーしたところ、


子宮と接している膀胱後壁に内視鏡で認められた、粘膜肥厚像と隆起性病変が認められました。放射線科の読影所見としても異所性子宮内膜症に矛盾しないとのことでした。

最終的な確定診断は、組織学的な診断になるため、近隣施設にご紹介させていただき、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)を施行した結果、病理診断は膀胱異所性子宮内膜症と診断されました。

文献的考察としては、膀胱異所性子宮内膜症は全子宮内膜症のうち、約1%以下の頻度で、時に強い線維化と炎症を生じ、排尿障害や排尿時痛、血尿をきたす、と記載されています。
膀胱異所性子宮内膜症の発症機序には様々な可能性が示唆されていますが、今回はMRIの画像所見から、子宮前壁の子宮腺筋症が膀胱壁に進展するという説が最も有力であると考えられました。
この方は妊活中で、すでに婦人科通院加療中の方でしたが、子宮内膜症や子宮腺筋症などは否定されていただけに、当院受診を機に今回の件が発覚した貴重な症例でした。
今後の治療方針として文献的考察で散見されるのは、腹腔鏡手術による膀胱部分切除術が妥当とされているようですが、今回は妊活中であり、患者さんが外科的切除を希望されなかったため、経過観察となったようです。
外科的切除以外にはホルモン療法も適応があるようですが、あくまで対症療法であり、再発症例もあるようで、今後の治療方針も慎重に吟味していく必要がありそうです。
頻尿という、一見当たり前の排尿障害でも、膀胱炎であったり、過活動膀胱であったり、膀胱癌や膀胱結石などなど原因は様々ですが、今回の様に本来婦人科疾患である子宮内膜症が膀胱という異なる部位に発症することで出現することもあるわけで、鑑別診断を数多くストックしていないと、見逃してもおかしくない貴重な症例を経験させていただきました。

あ、追伸ですが、、、。
本日第104回全国高等学校野球選手権大会2回戦で、我が母校盛岡一高を岩手県大会ベスト4で破り、岩手代表として甲子園出場を果たした一関学院が、先制点を挙げて善戦するも、5-7で明豊に逆転負けを喫してしまいました。とても白熱した試合で、テレビの前で絶叫しながら見ていましたが、惜しくも敗れてしまいました、、、。残念!でも岩手の野球を甲子園で披露してくれて、ありがたかったです。一関学院の選手の皆さん、お疲れさまでした!