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尿道結石

5月に入って、気温が上昇してきたせいか、先月まではほとんどしばらくお目にかかっていなかった、尿管結石の疝痛発作による受診患者さんが後を絶ちません。
先日も、過去に何回も尿管結石の自然排石を繰り返されている方が受診されました。普段と違い、1か月以上疼痛と血尿が持続し、長引いているので心配になって来院されたとの事でした。
ここで、尿路の解剖についておさらいします。結構一般の方々が尿道と尿管がごっちゃに認識されているケースが多いようです。

おしっこする時尿管が痛い、昨日左の背中がすごく痛かったので、尿道結石ではないかと思った、などなど。尿管は腎臓から膀胱をつなぐ管腔臓器で左右の腎臓からそれぞれ出ているので、2本あります。尿道は膀胱から外尿道口まで1本しかありません。尿管は上部尿路、尿道は下部尿路に分類されます。



今回の方は尿路エコー上左腎に大きな結石を認め、右腎盂は拡張しておりました。また、右尿管下端(膀胱尿管移行部)に結石が存在し、ここが尿の通過障害となっており、右腎盂拡張の原因となっていたようです。(今回は腎杯の拡張までに至っておりませんので、厳密にはいわゆる水腎症という診断にはなりませんでした)

レントゲン撮影でも左腎には大きなサンゴ状結石が、骨盤内には右膀胱尿管移行部結石がそれぞれ写っておりました。膀胱尿管移行部結石は長径8mm大でそれなりの大きさですが、膀胱近傍まで順調に下降してきたので、このまま自然排石を期待できると判断し、内服加療を開始しました。しかし、1週間後、尿が出にくい、おなかが張ると来院されました。膀胱内に結石が到達した後、排尿の際に尿道内に結石が嵌頓することが稀にあり、尿閉になることがあります。

すぐさま膀胱鏡を挿入して、尿道内を覗いていくと、案の定尿道括約筋と精丘との間に結石がはまり込んでいました。

鉗子を用いてUFOキャッチャーのごとく把持して体外に取り出そうとするも、鉗子の把持力が弱いのと、括約筋を超えるときの抵抗とで、どうしても結石が逃げてしまうため、作戦を変えて、一旦膀胱内まで結石を押し戻しました。

ここで、結石を把持鉗子で砕いてある程度小さくして、自然排石を期待したところ、数日後にやっと排石されました。

排出時はとっても痛かったそうです。膀胱から排出される時の尿の流速は約10-20ml/secなのでそうそう尿道内に結石が詰まることはないのですが、今回は8mm台と大きめのサイズであったため、運悪く尿道内に嵌頓してしまったようです。自然排石できなければ、レーザーでの破砕手術になってしまうところでした。
こういう、緊急性のある処置まで行ってしまうため、患者さん達をお待たせしてしまう原因になっております。すみません。
あとは、左腎にある大きなサンゴ状結石を後日どうするかですね。この規模のサンゴ状結石となると、術式はECIRS(経皮・経尿道的同時内視鏡手術)になりますね。この術式ができる施設は限られてきますが。
これから気温と湿度が上昇してくる季節は、尿管結石が旬の疾患です。飲水摂取励行とし、高カロリー、高脂肪食、過剰なアルコール摂取は控えて、結石形成を回避していきましょう!