BCGと聞くと、まっさきに連想するのが”結核のワクチン”ですよね?ウシ型結核菌を弱毒化した生きた菌で、泌尿器科領域でも膀胱癌の再発予防のために、手術後の後療法として膀胱内注入療法が行われています。
1976年に膀胱癌に対するBCGの膀胱内注入療法における臨床効果が初めて報告され、常に他の抗癌剤との比較試験において優れた再発予防効果を示し続けています。BCGの抗腫瘍効果については、大まかに直接作用(一酸化窒素(NO)によるDNA損傷)と間接作用(自然免疫反応、獲得免疫反応)があり、これらが複雑に絡み合って効果を発揮していると考えられています。
今回60歳台の男性が、PSA高値でMRIを撮影したところ、PIRADSカテゴリー4-5の前立腺癌疑いで他院へ前立腺生検目的で紹介しました。そこでの生検結果は悪性像なし。ただ、術前の尿検査において、異型細胞が認められたため、尿細胞診を施行したところclassⅢが検出されたと紹介先からお返事あり。その後、患者さんにその旨をお伝えし膀胱鏡を施行したところ、膀胱頸部に多発性に広基性乳頭状腫瘍が散在しておりました。今まで肉眼的血尿はなく、顕微鏡的な血尿もなく、エコー上でも指摘出来なかった膀胱腫瘍でした。

【膀胱エコー:膀胱内に腫瘍性病変は確認できず】


【膀胱鏡所見:膀胱頚部を中心として広基性乳頭状腫瘍が散在】
すぐさま、再度生検した紹介先の病院へ紹介させていただき、後日内視鏡的に膀胱腫瘍の切除術を施行していただきました。病理結果はUC(尿路上皮癌)、pT1(粘膜下層)、high grade(G2>G3)でした。腫瘍深達度がpT1という結果であったため、残存腫瘍が無いか、また、ほんとに筋層浸潤が無かったのか(筋層浸潤の有無によって膀胱全摘術の適応か否かが決定するため)を判別するため、後日2nd TUR-Bt(2回目の経尿道的膀胱腫瘍切除術)を施行することになりました。2nd TUR-Btの結果、残存腫瘍なく、前回のTURで切除しきれていた、という結果になりました。今回は多発性の膀胱腫瘍であったこと、癌の顔つきが悪い(high rade)、pT1(筋層まではぎりぎり行っていなかった)であったことから、再発の多い膀胱癌に対する後療法として、抗癌剤よりも抗腫瘍効果の高いBCG膀胱注入療法を当院にて行うこととなりました。レジュメでは週1回を計6-8回が推奨されており、最近では維持療法が行われるようになってからは導入時は6回が基本となっている様です。

【BCG薬液と生理食塩水、シリンジ、サフィードネラトンカテーテル一式】

【サフィードネラトンカテーテルを膀胱内に挿入後、膀胱内の残尿を排出】

【膀胱内にBCG薬液を生理食塩水にて溶解し、ゆっくり注入しているところ】

【BCG膀胱注入後の排尿日誌:副作用に排尿時痛や残尿感、発熱等があり、問題なく注入できるかを患者さんの体調を確認しながら、無理なく施行します。】
今回は当院にて8回の膀胱注入療法を行いました。維持療法についても説明しましたが、3年間に渡り長丁場の膀胱注入療法は医療経済的にも、身体的負担においてもなかなか厳しいという結論に至り、今回は行わないこととなりました
現在術後3か月経過しておりますが、術後尿細胞診classⅡで細胞レベルでも再発なく経過良好です。



【BCG膀胱注入療法後2か月後の膀胱鏡所見:手術瘢痕のみ。NBI(狭帯域光観察像)でも再発所見を認めず。】