発作性心房細動、心房細動、不整脈についてわかりやすく説明、解説しています。 発作性心房細動、心房細動、不整脈についてわかりやすく説明、解説しています。

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発作性心房細動(Paf)

心房細動は、泌尿器科だけをみている日常ならお目にかかることはほぼないかと思われますが、当院は泌尿器科・内科を標榜しているため、生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病etc)も見させていただいておりますため、しばしば遭遇する不整脈です。
特に生活習慣病をお持ちの方々は、定期採血以外に年1回の心電図検査も行っております。なんで心電図も撮るの?と思われがちですが、生活習慣病の何が怖いかって、それは血管壁の微小な炎症やアテローム(粥状硬化)の形成などから動脈硬化が進み、血管の内腔が狭くなり、血栓などができやすくなることにより生じる心血管イベントの発症につながるからですよね?ですから、普段の無症状の状態での対照群がないと、自覚症状があった場合や、無症状であっても小さな変化を見落としかねないので、定時での心電図followは欠かさず行っています。
今回の患者さんも前立腺肥大症と高血圧、高コレステロール血症が併存していたため、通院し始めた4年前から心電図検査を年1回行って来ました。

通院開始当初の心電図波形:きれいな不整の無い洞調律(P波:心房の波形がしっかり認められています)脈拍83/分(正常50-100/分)を呈しています。

4年前と3年前の心電図では不整のない洞調律の波形であったのが、2年前に行った心電図では全く自覚症状の伴わない心房細動の波形が認められました。


2年前に定期followで撮った心電図:P波(心房の波形)を伴わない、基線が不規則に動揺しているf波が認められています。脈拍数96/分を呈しております。

心房細動はほとんど自覚症状がないのが特徴で、今回もたまたま定期followで心電図を撮っていたため、発覚したケースです。心房細動はほっておくと、心房内での血液の乱流により血栓ができてしまい、それが脳血管内に飛んでしまうと心原性脳梗塞を発症してしまいます。すぐに精査加療目的に近隣施設へご紹介させていただき、後日カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)治療を行っていただきました。その後、2年間は再発なく、DOAC(直接経口抗凝固剤)も服薬しながら当院で経過を見てきました。

そんな中、つい先日、気温が高い日中、庭で作業中に気分不快になり、脈も速くなって血圧もいつもより下がったため、熱中症ではないかと患者さんが来院されました。すぐに心電図を撮ったところ、単なる心房細動ではなく、脈拍数が130台/分に達した発作性心房細動の波形になっていました。


今回の発作性心房細動の心電図波形です。脈が不整でP波(心房の波形)が無い、心拍数139/分(正常50-100/分)を呈しています。

すぐにアブレーション治療を行った施設に連絡し、緊急で診てもらったところ、虚血性心疾患で鍵となる心筋障害のマーカーであるトロポニンTが陽性であったとのことで、すぐさま冠動脈造影を施行したが異常はなかったとのことで経過観察となったようです。
心房細動に対するカテーテルアブレーション治療は1回の治療で約70-80%が治癒するとされているようですが、今回の様に再発するケースもあり、今後も厳重なるfollow upが必要であると考えられました。
地域医療を担う一診療所として、専門性のみにとらわれない柔軟な姿勢で日々診療していかねばと改めて身の引き締まる思いをしました。
また一つ、今回は専門外の循環器の勉強をさせていただきました。