前立腺癌の手術は今やロボット支援下での手術がスタンダードになってきております。その中でも単項式で経膀胱的アプローチの手技はなかなか実践されている施設は多くありません。 前立腺癌の手術は今やロボット支援下での手術がスタンダードになってきております。その中でも単項式で経膀胱的アプローチの手技はなかなか実践されている施設は多くありません。

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ダ・ヴィンチSPによる経膀胱的前立腺全摘除術を見学して来ました!

先日、休日中でありながら、かねてから一度見てみたかったロボット支援下でのシングルポートを用いた経膀胱アプローチでの前立腺全摘除術を見学させて頂きましたので、報告します。


【済生会横浜市東部病院前にて】

場所は隣町の鶴見区にある済生会横浜市東部病院さんです。こちらの病院には過去にブログで紹介した事のあるダ・ヴィンチSPを備えており、本来ロボットアームはカメラポートを含めて4本あるのですが、ダ・ヴィンチSPは単項式で一つの穴からカメラ、鉗子、吸引等必要な器械が全て出てきます。穴の大きさも4-5cmの切開線1か所のみですから、術後の回復はなんと言っても早いので、患者さんにとっては傷跡は目立たない、術後リカバリーが早いといいことづくめです。


【救急外来前で待ち合わせ】

地域医療連携の斎藤さん、そして執刀医の石田先生に朝早くからお出迎え頂き、いざオペ室へ。やはり手術室はいいですね。清潔感があって、きれいな空気が循環していて、明るいし、いい緊張感があって。オペ室、大好きです。


【オペ室にて。なんか初心に帰れます。】

麻酔の導入が終わって、術者、助手の先生が手洗いに行っている間、気になった点があったので麻酔科の先生に質問しました。今回A-line(動脈圧のリアルタイムのモニター)を取っていませんね?と聞くと、”そう、ほとんど出血しないしからね。”と。そして、自己血も用意していなかったので、もう開腹手術の前立腺全摘術とは全く異なる概念と化したんだ、と改めて思いましたね。


【シェーマは経膀胱的ではなく、経後腹膜アプローチです】

今回は眼圧チェックが間に合わなかったとの事で、頭低位にはせず、フラットポジションの体位で行われましたが、経腹膜アプローチと違って、腸管が邪魔にならないのでやりずらさは無かった様です。
恥骨から約3-4横指の部位に約4-5cmの横切開を入れて、皮下組織を筋鈎で分けていき、膀胱前面に到達。(その前に麻酔導入後に膀胱内にカテーテルを留置して、生理食塩水を膀胱内に注入して、エコー下に膀胱の位置を確認し、皮膚にマーキングをしていましたね。)注射針で膀胱を穿刺し、膀胱内の生食のバックフローを確認。ペアンで膀胱壁を把持してメスにて切開し、膀胱内に到達。その後ポートを挿入し、術者である石田先生がサージオンコンソールに座って、手術開始。
画面中央に見える内尿道口の数cm下方から3-9時方向に切開を加え、膀胱後面に存在する左右の精嚢腺および精管膨大部を同定し、精管膨大部を切断。精嚢腺を周囲から剥離し、デノンヴィエ筋膜を切開。その後直腸前面から前立腺後面を剥離。その後残りの膀胱頚部9時から3時方向を切開し、前立腺前面を露出。膀胱頚部から前立腺を覆っている左右の側方靭帯(lateral wing)と前立腺被膜との間を順次剥離していき、前立腺尖部に到達。(今回は両側神経温存では無かったので、そこまできっちり側方靭帯を残す意識は無かった様ですが、極力組織の挫滅をしない様鋭的な剥離操作に気を使っているように見えました。)気腹圧をそれまでの10mmHgから12mmHgに上げて、深陰茎背静脈(DVC)の切断を開始。その後V-locクロージャー(釣り針の返しの付いた様な糸)で連続縫合し、止血完了。その後尿道を切断し、膀胱と尿道吻合を開始。ここが、従来の膀胱の外側からとは違って、膀胱の中からの吻合のためとてもテクニックがいる操作であると感じました。膀胱頚部を外⇒内に運針し、尿道側は内⇒外と運針。膀胱頚部は広く切開されているので、尿道の口径に合うように膀胱尿道吻合を終えた後は、0時方向の膀胱壁はテニスラケット状に連続縫合で閉創。ここで疑問に思ったのが、膀胱内から縫合すると結び目が膀胱内に残ってしまい、術後膀胱内に結石が出来てしまわないかと。石田先生にその旨を質問すると、糸は約90日で溶ける吸収糸なので今までは結石形成はないとの事。また、膀胱頚部が広く切開されたあと縫合しているが膀胱痙攣(テネスムス)による術後のUUI(切迫性尿失禁)の発症について質問すると、確かに出現はするものの、そこまでひどくはなく続いても数週間で大きな問題にはならないとの事でした。最後にバルーンカテーテルがスムースに挿入できることを確認。バルーンに蒸留水を入れて膨らませ、摘出した前立腺および精嚢腺を体外に出してロボットでの手技は終了。ポートが挿入されていた膀胱壁を筋層および鞘膜の縫合をし、閉創して終了。ドレーンは入れず。術当日の夜から食事開始。術後3病日目にリークテストの後バルーンカテーテルを抜去予定との事。


【実際のダビンチSP本体】

この、シングルポート下での経膀胱的前立腺摘除術の最大のメリットは、通常の経腹的アプローチと違い終始後腹膜腔内で完結させているため侵襲を軽減させられる事、レチウス腔(小骨盤腔)を展開しないため、極力骨盤内の組織の変性、解剖学的なズレや挫滅、ストレスを軽減できることで術後の尿禁制の回復が早まる事、そして術後の鼠径ヘルニアの発症が現在までに無い、ことにある様です。反面、手術適応はかなり限られるというデメリットもあります。基本前立腺全摘術の適応は限局癌(Organ confined disease)、臨床病期cT2N0M0に限られますが、術野が狭い範囲に制限されるため、リンパ節郭清を要する症例には向かない様です。また、手術手技に習熟するまでにそれなりの時間を要するため、切除断端の陽性率が高いとの報告があります。よって、全国でも実践されている施設は数か所のみで、その中でも済生会横浜市東部病院泌尿器科石田勝先生の手術成績は従来の手術方法と同水準であり良好の様です。今回で17例目との事でしたが、かなり高いレベルまで熟達されていました。
全国でもそう行われていないダヴィンチSPによる経膀胱的前立腺全摘除術を直に拝見させて頂き、感動しました。今後の診療に対するモチベーションアップになります。
このような機会を頂いた済生会横浜市東部病院の地域医療連携ならびに関係者の方々、休日にもかかわらずお出迎え頂いた斎藤さん、そして執刀医として見事な手術手技を披露して頂いた泌尿器科部長の石田勝先生に心から感謝いたします。


【帰りに綱島駅近くの武虎家さんでお昼を頂きました。オペ見学後の空腹には家系ラーメン海苔増し+ライスが絶品です!!】
この歳になると、飲みの後の締めのラーメンは命取りになります。でも、オペ見学の後の締めのラーメンは格別においしいし、きっと心身共にとっても良い活力になる事間違いなしです!!