両側尿管結石の症状と診断、病態について 両側尿管結石の症状と診断、病態について

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両側尿管結石

いやー、まさに夏は尿路結石が旬の季節ですね!!
先日40歳台の男性が、肉眼的血尿と左背部痛を主訴に当院受診されました。結石の排石も1個認められたとの事。初診時尿路エコー上左水腎症(+)、複数腎結石(+)、右腎は高度水腎症(++)、膀胱内異常所見なし、前立腺サイズ21.66ml。また、KUB(腹部臥位x-p)では左腎結石数個と、第5腰椎横突起レベルに左右の尿管結石と考えられる結石陰影が認められました。


(エコー上左水腎症を呈しております。)


(エコー上右高度水腎症を呈しております。)


(今回のKUB:2年前の右腎結石がごっそり右尿管内の第5腰椎横突起レベルまで下降してきております。そして、左腎結石数個と、同じく左尿管結石も第5腰椎横突起レベルに存在しております。)


(単純CT画像冠状断:両側尿管結石および両側水尿管の像を呈しております。)

実はこの方、2年前にも左背部痛を主訴に当院受診され、その時は右腎に数個の結石と、疼痛の原因であった今回と同じ位置(第5腰椎横突起レベル)に左尿管結石を認めておりました。その後、左尿管結石は自然排石され、一旦は終診となっておりました。


(2年前の初診時のKUB画像:右腎に複数個の結石と、第5腰椎横突起レベルに左尿管結石を認めています。)

今回は両側尿管結石であり、一番恐れるのは、両方の尿路が塞がってしまい、尿の流れが途絶えてしまうと、急性腎後性腎不全から尿毒症に至ってしまうリスクをはらんでいます。すぐに採血と、CTで現状を把握することとしました。CT上では、KUBとエコーの所見と同様に両側尿管結石および両側水腎症の像を呈しており、また、腎機能においては、Cr1.12(0.61~1.04)↑、e-GFR(推算GFR:1分間当たりに糸球体でろ過される尿量)56.4ml/min(>60)↓と低下しておりましたが、急性腎後性腎不全の状態までには至っていない状況でした。今後は、完全に両方の結石が尿管内に嵌頓(完全に隙間なくはまり込んでしまった場合)には、急性腎後性腎不全から尿毒症に移行してしまうため、まずは両側尿管ステントを留置して、急性腎後性腎不全を改善させた上で、時期をみて、経尿道的尿管結石破砕術(TUL)を施行しなければなりません。いつ、嵌頓してもおかしくない状況なので患者さんには病院を紹介させて頂くことをお勧めしたんですが、仕事の都合ですぐには入院加療はできないとの事で、慎重に外来followをしていくこととなりました。こちらとしては冷や冷やもんですが・・・・。
急性腎不全には、3つの病態があります。
腎前性腎不全:腎臓への血流が十分に行き渡らなくなることで、腎機能が低下してしまう状態です。いわゆる脱水状態となることで、循環血漿量が不十分なため、腎臓に水分と酸素と栄養が届かなくなるからです。特に夏場に多い傾向にありますので、日中の飲水摂取励行とし、ご自身の尿の色調が濃い時は脱水状態ですので、次の排尿の時は透明な尿の色調になる様に水分をしっかり摂取してほしいです。
腎性腎不全;腎臓自体が荒廃してしまい、本来の腎臓がまかなうべき機能である、必要なものは再吸収し、不必要なものは排出するという選択する機能と、水分調整ができなくなっている状態です。原疾患として最も多いのが糖尿病性腎症で全体の約4割を占めています。次に多いのが高血圧性腎硬化症、そして、慢性糸球体腎炎と続きます。保存期を経て血液透析に移行します。腎機能は不可逆的で、回復することはありません。
腎後性腎不全:上記2つのタイプとは異なり、今回の症例の様に腎臓への血流も良好、腎臓自体は全く問題なく元気であるのに、尿路の流れを妨げられることで、老廃物や過剰な水分が体外に排泄されなくなる状態です。一刻も早く尿路の通過障害を解除してあげないと、心不全や尿毒症になり、さらに腎機能も腎性の腎不全に移行してしまうことになります。
今回は、2年前と同様に左背部痛で来院されましたが、実は2年前に複数個あった右腎結石が一同そろって右尿管内に落ち込んでしまっており、左のみならず両側尿管結石の状態で診断されました。
早く、仕事の目途を付けていただき、結石の治療を行わないと大変なことになってしまいます。
頑張って、患者さんを説得しないと・・・。

追伸:現在第105回全国高等学校野球選手権大会が各地方で熱戦が繰り広げられていますね。GWにも我が母校盛岡一高の岩手県大会地区予選に応援に行ってまいりましたが、報道にもある様に秋田県を中心に、周辺の東北地方が大雨のため、試合がかなり延期になっておりました。本日7月17日久慈東高校と予定より3日遅れで対戦し、6-5で辛くも勝利を収めました!!明後日は、ベスト8をかけて、令和の怪物佐々木朗希投手の実弟である、佐々木怜希率いる大船渡高校との対戦です!!皆さんも、この試合、注目してくださいね!
できれば我が盛岡一高の応援をよろしくお願いします!!